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20 1月 2012 | 0 Comments
僕が大学3年の時、アルバイト先に新しい子が入店してきた。 僕の身長は182センチで大きい方なのだが、バイト先の和食屋には何故か180センチを超す男が僕を含めて4人もいた。 身長の高い男は何故か小さい女性が好きな傾向にあるんだ。 自分にないものを求める所為なのかどうかは解らないけど、僕以外の3人も「ちっちゃい子好きだ~」と言っていた。 新しく入ってきた女の子は、見事にちいちゃくて「手乗りにできそうだ」と僕達は顔を見合わせた。 おまけに僕達の趣味は酷似していて、小動物系の顔の子が好きだった。 新人の子は『リス顔』をしている。 朝、といっても夕方なんだけど夜の世界では、開店前を『朝』と呼び「おはようございます」と挨拶するのが古くからの習わしだ。 店長が新しい子を横に立たせて、朝礼を始めた。 「今日から、みんなの仲間になったササキササくんだ、仲良く働いてくれよ」 ササキササ? ささ きささか? 佐々木 ささか? 店長が変な所にアクセントを持って行くのは、お国訛りが取れないせいだ。 ササキササさんは恥ずかしそうに自己紹介をした。 「ササキササです、宜しくお願いします」 「佐々木君の担当は、タニタニ君にお願いする。佐々木君、この大きいタニタニ君に何でも教えて貰って」 「タニタニ?さん?」 「ああ、彼ね、タニタニって書いてタニヤ君って言うんだ、みんな大きいから見間違えないであげてね」 大男3名がぶーぶー言っている。 「なんでタニタニなんすか~?」 「なあ、なんでタニが担当なんすか~?」 「谷谷が一番教えるのが上手いからだよ。それに、手が遅い。ココがお前らと違うところだな」 手が遅いと言われて喜んでいいのかどうか解らないが、まあ他の3人に比べると僕にはチャラさがない。 モテもしないのだが、まあ、そのおかげでササキササさんの担当になれたわけだから喜ぶべき事だとしておこう。 「いいな~、タニタニ。地味得?」 「いいね、それ、地味得ってワード」 「ササキササちゃんってどんな字書くの?」 早速「ちゃん」付けか、僕には真似できないな。 「お、そうだ、佐々木君、谷谷に名札作って貰ってね。さあ、今日はご予約でもうお席が埋まってるから気合入れて頼むよ~、以上朝礼終わり」 僕は店長室にササキササさんを連れて行き、名札を作る作業に取り掛かった。 「佐々木さんは、普通に佐々木でいいんですよね?」 「はい。ササは小さい砂と書きます」 「小さい砂?凄くすてきな名前だね、ご両親詩のセンスがありそう」
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2 4月 2012 | 0 Comments
「そんなコトないんです。ただ生まれた時、未熟児だったので。今もちっちゃいですけど」 「え?そうなの?でも凄くすてきな名前だよ」 「ありがとうございます」 うちの店は代々男ばっかりのバイトの中に、お姫様みたいに女の子を雇う伝統がある。 店長の趣味なのかは解らないが、女の子が1人しかいないと何故かお客さんがその子を異様に可愛がるんだ。 だから、ちょっとそそっかしい子が入ってきたりしても大抵の事は許されてしまう傾向にある。 やっぱり店長の狙いなのかもしれないな。 近所に女子短大があり、バイトの女の子も何故か伝統的にそこの学校の子で受け継がれている。 店は店内恋愛禁止になっているんだけど、理由は説明されなくても誰にでも解る。 店内恋愛をすると同じ日に休みたがるので、結局どちらかがバイトを辞めてしまうからだ。 僕は、ササキササさんに店の中を案内しながら「店内恋愛も禁止なんだよ」と教えた。 「ササキササさん」 「ササキでもササでもいいですよ」 「じゃあ、ササ・・・ササ・・・ちゃんって呼んでいいかな?さんの分サが1つ減るし」 「タニタニさんって面白いですね」 ササキササさんはクスクス笑いながら僕の後をちょこちょことついてきた。 しかし、この一見大人しそうなササキササさんは歴代のバイトの姫たちの中でも群を抜いてお客さんの人気が高かった。 予約の電話で「今日ササちゃん居る?」と訊かれる程だ。 「ササキササは本日お休みを頂いているんですよ」などと言おうものなら、「じゃあ、悪いけど別の日にするよ」なんて言われてしまう事もよくあった。 仕事の覚え方が特別早い訳ではないんだけど、ササキササさんが持っているものは、たぶん天性の物なのじゃないかと思う。 あまりバイトの子を可愛がる事がなかった厨房の職人さんからの支持も厚かったし、殆ど口を聞かない洗い場の男子とも楽しそうにおしゃべりしていた。 ササキササさんは、本当にリスのように常にちょこまかと動き回っている。 自分の手が空けば、洗い場に入り食器洗いを手伝い、厨房を覗いては黙って皿を並べていた。 お客さんが煙草をくわえると、スッとマッチで火を点けてビールが無くなっているのを見ると、人差し指を立てて首を傾げる仕草を見せる。お客さんがクビを縦に振るとビールをもう1本運び、横に振ると燗酒を出したりするんだ。 料理を食べる速さを見て厨房に声を掛けている。 「柊の間のお客様ごゆっくりさんです。橙の間はお子様連れです」 僕には意味が解らなかった。